« BモバイルのDoccica導入 | メイン | GLOBEのADC賞に異議がある »
2009年07月03日
デザイン事務所の金銭感覚
メンテでいろいろなデザイン事務所や出版社に行くと、「お金がかかるから、なかなかマシンの買い替えやソフトのバージョンアップができない」という相談を受ける。トラブルの原因がマシンの劣化や旧バージョンでの互換性にあることも多い。
確かにMacを新品に買い換えれば2〜30万はかかるし、AdobeのCSだってDesign Standardなら19万くらいする。さらにモリサワフォントを揃えれば結構な金額になってしまう。
でも、いつも思うんだけど、俺は彼らよりもおそらくずっと売上げが少ないはずなのに、常に最新のマシンとソフトを揃えて仕事できている。Windowsを始め予備のマシンやモバイルなども最新の機種を揃えていられるのは、別に新型が好きな訳じゃなく必要経費に対する考え方や計算が彼らと違うからだ。
グラフィックのデザイン料金というのは、きちんとした基準がないのでアバウトに決まってしまう。JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)などではある程度基準となるデザイン料金を公表しているけど、実際にはあまり使われておらず、「前回このくらいだったから」「誰々はこのくらいもらっているから」「これだけしか予算がないから」などといった理由で金額が決まってしまうため、労働時間や固定費を考えた原価計算が出しにくい。
通常、モノやサービスの価格は材料費やかかる時間での人件費、必要とされる設備やパテント料などでおおよその金額範囲が決定される。しかしクリエイティブ・ワークというのは時間換算を始め、計算しづらい要素が多いので、どうしてもアバウトになりがちなのだ。これは他の業種で仕事をしたことのある人間から見ると異常なのに、デザイナーたちはそれになかなか気がついていない。
デザインというのは基本的に経費のかからない仕事だ。通常考えられる支払い(固定費)は、せいぜい事務所の維持費、通信、資料代くらいで、後は自分の人件費がほとんどを占める。これを経理や税務という視点で見直してみよう。他の業種に比べると、どんなに仕事がなくてもなかなか赤字にはならず、勘定科目でいう貸し方と借り方のバランスが極端に違うから、売上げのほとんどが利益となってしまい、そのぶん税金がかかるというとんでもない事態だということがわかる。
法人と個人や申告の方法で違いはでるけど、通常のデザイン収入であれば、所得税が利益に対して10〜20%かかってくる。だからデザインのような業種では、作業環境の整備にきちんと経費をかけておかないと、税金を取られてしまうか、何か別のことに無駄遣いをしなくてはならないかのどちらかなのだ。もちろん無駄遣いは税務調査が入ったときに大きなペナルティを食らう危険性がある。
こう考えよう。普通のデザイナーなら悪くても月に50万円分くらいの仕事はするだろう。そのうちの5%を作業環境の経費として最初から計算しておけばいい。すると月に2万5千円。年間で30万だ。これだけあれば、毎年Adobe CSを最新版にアップグレード(10万)して、モリサワパスポートを更新(5万)し、3年に一度Macを新品に買い換え(30万の1/3)てもまだ5万円余る。これをスタッフの人数分やればよい。
つまり、Macやソフトやフォントみたいな最低限の作業環境は「儲かったら新しいのを買おう」「壊れたらその時考えよう」というようなものではなく、最初から自分に必要なものを購入しておき、その金額を経費としてデザイン料金に計上するべきなのだ。他の業種ではどこでも当たり前にやっていることなのである。
フリーのデザイナーでも会社でも、なかなか最初から固定費を計上することができない場合が多い。経営側から見ると「新たな固定費」というのは、なんかちょっと怖いからね。しかし、やればわかるけど、この方が管理も計算も楽なうえ、常に最新のハードとソフトを使えるから安心で快適なのだ。法人の場合は一括償却資産などのことも考えなくてはならないが、基本は同じこと。決算をしてみないと自分たちの作業環境にかけられる予算が出てこないというのは、基本的にどこかが間違っている。
この考え方だとシステムの計画導入ができるから、その場しのぎ的なシステム構築よりもずっとお得で効率的でもある。だいたい「明日までに必要」なんて場合に、先を見越したいい買い物なんて出来るわけないのだから。
投稿者 ef : 2009年07月03日 13:49
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://pictex.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/486
このエントリーに直接関係のないアフィリエイト目的のトラックバックは削除します。