
3月23日にインプレスジャパンから「TrueTypeフォントパーフェクトコレクション」改訂第5版が発売されます。これはビットストリームのTT&T1欧文フォントを500書体ずつ収録したCD-ROM付の書籍で、本文では欧文書体の分類や簡単な歴史、使い方などを一般の人向けに解説しています。
この本について、思い出をすこしツイッター上へ投稿(3月1日)しました。以下はそのツイートの再録です。
私はこの本のフォント選択、解説、検証、ページデザインなどを行っています。本書は今回が98年の初版より都合10刷目となるロングセラーで、収録フォントは変更ありませんが、Win7などへのインストール方法を追加し、解説も多少リライトしました。
実は印税契約じゃないから、重版がかかっても私の実入りはないんですが、改訂の時の作業料金をいただけますし、関わった書籍が10年以上の長い間受け入れられているというのはうれしいものです。
もともとこの企画はインプレスの辻本さんと玉巻さんが、ビットストリームのフォントライセンス契約が取れそうなときにMdNの編集長だった野口さんへ相談に行き、そこで私を紹介していただいたのが始まりです。
最初にビットストリームがライセンスを持っている数千ものフォントを渡されて、この中から500書体選んでパッケージ化したいので、選択・解説・デザインのすべてを受けてくれないかというお話でした。
私はフォントは大好きだったけど専門家じゃなかったので、ちょっと戸惑いました。そこで、神保町の洋書印刷でAMのVarityperという電算写植を打っていた知人に相談し、助言を受けながら、汎用性の高いと思われるフォントをチョイスしていきました。
私が考えたのは、見た目が地味でも汎用性の高いフォントを選ぶこと、モンセンのように書体の美しさと組んだときのイメージがわかる印字見本にすること、デザイナーではない人に向けた書体と組版の簡単な解説を入れることの3つです。当時は一般向けのそういった書籍はほとんどありませんでした。
書体と組版の解説では、主に日本軽印刷工業会が出していた「絵で見る欧文組版百科」(1988年)を参考にしました。これはThe TypEncyclopediaという洋書の翻訳本で、研究者向けではなく欧米の写植やさんのために書かれたガイドブックです。
こちらがその原書「The TypEncyclopedia」です。
さらに、ピーチピットの「Mac is not a Typewriter」など一連のロビン・ウイリアムズ本も参考にしました。初心者に向けてフォントや組版の話をするときは、マニア的な視点ではなく実用的な視点からにしたかったのです。
他にも美術出版社の「欧文文字の基本」や、朗文堂の研究書なども参考にしています。片塩二朗さんを訪ねてお話を伺ったのもその時で、それがその後、ちょっと困ったことになりました。 http://tonan.seesaa.net/article/47184424.html (コメント欄を参照)
もうひとつ困ったのはビットストリームが、Type1までライセンスしたのは担当者の間違いだったからTrueTypeだけにしてくれと出版直前に言ってきたことです。これはインプレスさんが粘り強く交渉して、なんとかType1フォントの同時収録を許可していただけました。
それでもビットストリームのベーシックなフォントが500書体入って2980円なので、売れ行きは好調でした。いろいろなデザイナーの事務所でこの本が置いてあるのを見たり、本書がきっかけでフォントデザイナーになったというメールもいただきました。
売れ行きがよかったので、ビットストリーム側にも喜んでもらえたようでした。Type1のライセンスも継続してもらえることになりました。
本書が世に出てから12年も経ち、当時に比べるとフォントの情報も簡単に手にはいるようになりました。あの時にこういう本に関わることができて光栄でした。
初版からライセンスやバグの関係で数書体を入れ換えましたが、基本的には内容はそのままなので、すでに持っている人は新たに買う必要はありません。