さぬきうどん巡り


うどんを食べに、奥さんと四国まで行ってきた。

讃岐うどんを食べに行きたいと思ったのはもう10年近く前、スペースシャワーTVでサニーデイ・サービスの「今日を生きよう」という曲のPVを観てからだ。

このビデオは、曲や歌詞とは何の関係もなくサニーデイの曽我部恵一たちが故郷・香川のうどん屋をはしごするという奇妙なものだった。彼らが田舎の納屋のような製麺所や田んぼのあぜに腰掛けてすするうどんは、なんとも不思議に魅惑的で、それが「今日を生きよう」という曲のテーマとぴったり重なるのだ。こんなPVは観たことがなく、素晴らしいと思った。しかし当時はまだ東京に讃岐うどんのブームが来る前で、あの田舎のうどん屋がどういうところなのかを知るすべはなかった。

それからしばらくして新潮OH文庫から麺通団の「恐るべきさぬきうどん」が出版され、はなまるを始め、東京にも讃岐うどんの店が出店するようになって、ようやくその全体像を知ることができたわけだ。讃岐うどんの奥の深さは今さら俺などが何か言うまでもない(興味のある人はこちらのサイトなどを参照)けれど、それからずっと、いつか機会があったら香川までうどんを食いに行ってみたいと思い続けていた。

讃岐うどんは生活の糧だ。田舎の製麺所が地元のスーパーや病院や学校のために打っていたうどんの玉を、近所の人たちの朝食用にどんぶりにいれて小売りし始めたのが最初だと言われる。1杯たった100円のかけうどんには、田舎の生活の重みがある。

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村上春樹も絶賛した「がもう」のかけは1杯100円。オプションのちくわ天は70円で計170円なり。

それほど時間に余裕があるわけでもないので、今回はレンタカーを借りて、がもう、田村、あたりや、小縣家、うどん棒、わら家、鶴丸などをはしごした。1日半で8件のうどん屋巡りは、ふだん小食の俺たちにしてはよくがんばった方だと思う。まあこちらは1杯の分量が少ないからできることだ。

食べたうどんは(特に名を秘す高松空港近くの1件を除き)どれも素晴らしく美味かった。特に田んぼの中にある「がもう」、超有名店になってもご近所相手の商売姿勢を変えない「田村」、街道沿いの巨大パチンコ屋(現在はスポーツセンター)の地下駐車場奥というとんでもない立地にある「あたりや」などは、うどん以上に店のシチュエーションを体験できただけでも感動的だった。「わら屋」の釜揚げと「小縣家」のしょうゆうどんも、食った者にしかわからない素晴らしさがある。それに、どうということのない街のうどん屋である「うどん棒」や「鶴丸」だけでも、この地のうどんに対するレベルの高さがわかるというものだ。

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しょうゆうどんの元祖「小縣家」では、1人1本の大根がおろし金とともに供される。420円。

四国は初めてだったので、うどんの合間にこんぴらさん参りや瀬戸大橋など人並みの観光もしてきた。四国の風景、特に山並みは独特で、牧歌的な感じが心を和ませる。本広克行の映画「UDON」にも出てきた讃岐富士(飯野山)の、なんともかわいらしいこと。

映画の「UDON」は、本広がフジテレビと組んで、安易なうどんブームに警鐘を鳴らすようなふりをしながら安易なうどんブームを作り上げようとしたきらいがあり、映画そのものの出来もイマイチだった。それでも讃岐富士や点在する用水池など田舎の原風景がスクリーンへ大写しになると、東京育ちの俺でもどこか切ない気分になったものだ。

映画「UDON」の原作にもなった「恐るべきさぬきうどん」の影響は大きかったようで、讃岐うどんブームは既に定着したと言えよう。まあ麺通団がブームにそのまま乗ってしまったのは、代理店&メディアというその出自を見れば当然かもしれない。しかし、俺がさぬきうどんの情報源としてずっと信用しているのは麺聖・森村氏のサイト「うどんグルメの旅」だけだ。ブームにまったく左右されず、相変わらず美味いうどんを追求し続けているところが尊敬に値する。

麺聖が指摘しているように、いまのうどんブームはいろいろと問題も抱えている。もともとが観光客誘致の名産品ではなく生活者のための「食」だったのだから、齟齬が出てくるのは当然だろう。でも、東京からの一見の観光客としては、この素晴らしい食文化を静かに大切に守っていってもらいたいと願う。いい旅行と美味いうどんをありがとう。

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さぬきうどん巡り への1件のフィードバック

  1. 平光 英司 のコメント:

    讃岐うどん巡り新人です。
    讃岐うどんはいいですよね。

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