「電子書籍についての私的考察メモ」が掲載されました。


「マガジン航」に「電子書籍についての私的考察メモ」が掲載された。このところ「電子書籍」に関する話題を目にすると、どうも違和感を感じることが多かった。それは何故だろうかとずっと考えていて、なんとかそれを文章にまとめたものだ。

最初に「電子書籍ってそもそも何のことだろう?」という質問を自分に問いかけ、思いついたことを1日中iPadの「iText Pad」へ入力していった。かなりのメモが溜まったので、今度はそれをMacの「Jedit X」で並べ替えしながらまとめていった。ちょっとした長さの文章ができあがった。

読み返してみると、自分でも「そうだったのか」という発見が出てくる。もともと自分の考えをまとめるために書いたものだけど、やはり断片的にぼんやり考えるのと、きちんと書き出して論考するのとではアウトプットが違う。そのあたりで、他の人はこれを読んだらどう思うのかを知りたくなった。

俺の知り合いで「電子書籍」のことと言えば仲俣暁生くんだろう。雑誌「本とコンピュータ」をやっている頃からこのテーマにずっと関わってきている編集者だ。「何か書けたらいつでも送ってよ」とも言われていたし、「航」への寄稿うんぬんではなく、まず彼がどういう感想を持つかを知りたかった。彼のほかにも知人のライターや編集者など数人に見せて感想を聞いてみた。

みんなの感想はそれぞれだったけど、「デジタル情報の身体性」という視点は今までの「電子書籍」がらみであまり話題になっていなかったせいもあり、意外にみんなから面白がってもらえた。最初は自分のブログへ載せようかと思っていたが、仲俣くんが「マガジン航」への掲載を申し出てくれた。
こういう思考実験は、ひとりでも多くの人に読んでもらった方が価値が高いと思ってるので、「マガジン航」への掲載はすぐに了解した。いくらか原稿料もくれるらしいのでありがたいことだ。

ということで、もし感想や意見、反論などがあれば、こちらのコメント欄にもどうぞ。

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「電子書籍についての私的考察メモ」が掲載されました。 への6件のフィードバック

  1. kaoritter のコメント:

    頭の中でごちゃごちゃ考えるのと、それを書き出して形にして見るのとでは、アウトプットの質が違いますよね。そのためにわたしもブログを書いていたんだと思い出しました。
    それはともあれ、ページネーションと言うキーワードに関して先ほどの私のブログでは会えて触れませんでした。
    書き始めたらきっと長くなりそうでもう少し、自分の中でもんでみたいと思ったからです。ただなんとなく見える方向性としては、私はページをめくるという身体的な動き(フリックなど)が書籍の原体験であったもしても、電子書籍に必須かどうかはまだいまいち腹落ちしてません。スクロールだけでひたすら読める書籍があるなら試してみたいものです。
    pictexさんの記事、良い意味でいろんな引っ掛かりを残してくれました。また何かまとまって来たらアウトプットいたします。

  2. ef のコメント:

    kaoritterさん、こんにちは。
    ちょっと誤解があるのかも知れませんね。私は「ページめくりなどの身体的な動きが電子書籍に必須」だとはまったく思っていません。私個人は「メルマガだって電子書籍」と考えています。
    私があそこで書いたのは、(商品としての)電子書籍を作るときには身体性を理解しておかないとマネタイズが難しくなる、ということです。実際にいろいろな原稿で電子書籍をレイアウトしてみるとわかりますが、崩れないリキッドのデザインをするというのは、組版にとってものすごく手間やコストがかかります。そのコストを誰が負担するのかはっきりしないかぎり、リキッドレイアウトを「電子書籍」という製品として成立・成功させるのは難しいということです。
    逆に言えば、読者なり作者なりシステムなりでそのコストを負担できれば、リキッドには利点がたくさんあります。しかし、現状では誰も自分のコストを増やしたいと思っていない。システムでも全然吸収できるメドがたっていない。結果としてリキッドやフォントの変換を推し進めようとすると、制作システムの下流作業者にすべての負荷がのしかかります。
    この話を書いているとき実際に念頭に置いたのは、日本雑誌協会がデジタルコンテンツ推進員会で雑誌の電子化を推進するときに「アクセシビリティ対応でリキッド(リフロー)を前提とする」と発表したことです。
    今回の考察は、kaoritterさんのTwieetに触発された部分があったのは確かですが、kaoritterさんたちのような人へ向けて書いたものではなく、どちらかというと、私の周りで一緒に仕事をしている出版社内部の人間やエディトリアルデザイナーに向けて書いたものです。なので残念ながら、kaoritterさんのようにこれから理想や興味を持って電子出版へ参加してみたい、という人が読んだら、水を指されたような気分になってしまうのかも知れませんね。
    個人の趣味で「電子出版」をするのであれば、レイアウトにかかる手間が五割増しになっても、それは大きな問題ではないかもしれません。しかし、それを仕事にしてビジネスしていくのであれば、この部分は死活問題なんです。なので、私が言いたかったのは「(リキッドなど)細かい理念にこだわっているより、現状可能な部分で始めないと、マネタイズは成功しないよ」と言うことです。Rough Consensus and Running Codeです。

  3. kaoritter のコメント:

    Rough Consensus and Running Codeに、完全に同意です。
    リキッドに関して言えば、個人的にはePub形式のようなマークアップでの電子書籍制作においてはむしろ、リキッドでの制作が簡単なのではと思っていました。InDesignなどでページレイアウトを完全にコントロールするDTPにおいてはおそらく、リキッド対応には余計な時間がかかるのでしょうね。私はどうも、Webの人すぎて感覚が違うのかもしれません。
    また電子書籍という言葉が広すぎるのかもしれません。制作においてはテキストメインのものと、雑誌のようにきっちりレイアウトされたもの、コミックや写真集など全画面の画像のみのもの、という三つを分けて考える必要があるのかも、と思います。
    ともあれ、引き続きページの切り替えが生み出すリズム、これが思考の整理に役立つかどうか、これが電子書籍にも必須かどうかが一番実感できていないところです。私は今の電子書籍はどれも従来の「ページ」概念にとらわれすぎているようにも感じます。これもautopagerizeに慣れ、リンクで次ページへの移動することをうざいと思い、長文をスクロールして読むことに慣れた感覚なのでしょう。現時点で電子書籍で巻物的なスクロールだけで読めるものを知りませんが、そういうものがあればぜひ試した上でどちらがいいか、体感してみたいなと、思っています。

  4. ef のコメント:

    うーん、やはりまだ誤解があるようですね。紙ではなくWebのデザインでもリキッドには利点と欠点があります。例えばMT5やWordPress 3のデフォルトテーマは固定レイアウトを採用し、リキッドにはなっていませんよね? kaoritterさんのご自分のブログでさえリキッドではない。それはなぜだと思いますか?
    また、書籍のレイアウトをその三種類にまとめることは不可能です。例えば「マニュアル」「図鑑」「楽譜」など、その三種類に収まらない書籍はたくさんあります。制作方法の分類としては「(小説など)ベタ組みの文章のみ」と「それ以外」の二種類で考えるべきですが、実際に市販されている書籍は「それ以外」のものの方が圧倒的に多く、複雑です。
    それと、私は自分の体験や実感をもとに「書籍の身体性」を語っているわけではありません。「多くの人がスクロールで読むテキストにお金を払いたがらないのは何故なんだろう」という提起をしているのであって、個人的な実感や体験は、かえって勘違いの元になると考えています。
    私が「Rough Consensus and Running Code」と書いたのは、口で理念を語るよりも手を動かして実際に作ろうよ、という意味です。
    kaoritterさんはTwitterで「文字サイズ、縦/横書き、画面光度が自由に変えられないテキストベースの電子書籍など滅んでしまえ!」と書きましたよね。しかし、私は今現在、実際にそういう電子書籍(PDF)を作り、売って生活しているのです。(今年だけでも数百万円分のPDF書籍をダウンロード販売しました。著者ではないので制作費の収入はわずかですが)
    私は自分の仕事や売っている製品に、プロとしての自信とプライドを持っています。私が作った製品を、アマチュアの人に「滅んでしまえ」と侮蔑される云われはないはずだと思っています。
    私たち現場の人間は「電子書籍」を少しでも魅力的で役に立ち、お金を生み出すようなものにしようと毎日努力しています。だから、せっかくkaoritterさんが電子出版に興味を持ったのなら、自分の理念に合わないものを罵るのではなく、自分が望むものを実際に作りましょう。そして公開して、経済行為として成立させましょう。大変だけど、きっと面白いと思いますよ。

  5. kaoritter のコメント:

    この何日かおっしゃっていただいたことが頭をぐるぐる回っていました。返信が遅くなりすみません。
    おっしゃる通りですし、かつそこまでおっしゃっていただいたことに感謝いたします。
    先日のツイートに「テキストベース」と明記したのには、PDFなどデザインされたコンテンツは含まないということを意図していたのです。そして、自分が作ったEpubのnookでの見栄えがあまりにも悪かったため、自分(とデフォルトのnookの機能)に対しての文句でした。
    とはいえ、あまりにも乱暴な物言いだったことを反省しています。
    私の発言の不用心さ、失礼さをずっとスルーしてくださったにもかかわらず、私の度重なる誤解のためにご丁寧に説明してくださってありがとうございました。
    今できる範囲のことをまずやってみること、そしてそれを「経済活動」として成立させること。
    そう考えると、何がいま「できる」ことなのだろう、と手が止まります。
    どこで止まるのかというと、誰に届けるのだろうというところ。
    届けたい人に、彼らが読みたい形でどう頒布するのかと考えるたびに、手が止まります。
    00年代前半、エキスパンドブックと呼ばれたCD-ROMを開発していたときは違いました。
    「パソコンを持ってる人のためのコンテンツ」で十分ターゲッティング出来ていました。
    当時はソフトにお金を払うのも当たり前でしたし。
    今はパソコンや携帯電話も含めれば電子的な読書環境が普及しましたが、まさに
    「多くの人がスクロールで読むテキストにお金を払いたがらないのは何故なんだろう」という疑問提起にぶちあたっている状況です。
    購入方法の煩雑さも、紙よりも不便な読書環境も、大きな壁なのでしょう。
    そういう、今出来ないあれやこれやを知りつつも、出来る範囲のことから先手を打つことが出来る人が開拓者なのだと思います。
    どうすればいいかを考えるという形からですが、一歩でも進む方向へ模索する勇気を頂きましたことを感謝いたします。

  6. ef のコメント:

    こちらの意図をくんでいただけたようなので安心しました、どうもありがとうございました。
    kaoritterさんが悪意でTweetしたわけじゃないことは、普段のkaoritterさんのポストを読んでいるので充分理解しています(笑)。私も、あれを読んで腹を立てたのではなく、「他にもよくこういうことを言う人がいるけど、それは何故なんだろうな?」と考え込んだのがきっかけなんです。
    実際に自分でやってみろと言われても、出版というのはなかなか大変な事業ですよね。誰に、何を届けるのかという本質の所まで掘り下げてしまうと、私もまだ答えは出ていません。こちらがいくら想像・想定してものをつくっても、公開した後は必ず一人歩きするのが「出版」というコンテンツなのかも。
    でも、いろいろと調べたり、ちょっとずつ手を動かして実際に何か作ってみたり、人に見てもらったりと言うことは、昔に比べてかなりやりやすい時代になったなあと感じています。特にこれからの電子出版ではCMSやブラウザの役割が大きいので、その辺はkaoritterさんのアドバンテージですね。いろいろと情報交換しながらはじめていきましょう。
    PS:コメントがエンドレスなピンポンになってしまうと大変なので、この後のレスはTwitterの方でやりましょう!ではではー。

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